中国著名史書文献リスト
(渡邊理)
はじめに
 
 この文献リストは、中国史に関する代表的著名な歴史書を記したものである。素人なりに学習し、見聞したものの一部である。なお、リスト中の 歴史書の一部に記した半括弧の数字は、いわゆる「二十四史」を年代別に列挙したものである。
 
リスト
 
1)司馬遷『史記』;吉田賢抗(他)訳、明治書院、1977年/全8巻、小竹文夫・武夫訳、    筑摩書房、1995年
曾先之『十八史略』;上・下巻、林秀一訳、明治書院、1970年
『春秋』;
左丘明(?)『春秋左氏伝』;上・中・下巻、小倉芳彦翻訳、岩波書店、1988・1989年/    竹内照夫訳、平凡社、1958年/貝塚茂樹(他)訳、筑摩書房、1970年
『春秋穀梁伝』;
『春秋公羊伝』;
劉向(りゅう きょう)『戦国策』;全3巻、近藤光男訳注、集英社、1975年
2)班固『漢書』;全8巻、小竹武夫訳、筑摩書房、1977〜1978年
3)範曄『後漢書』;石原道博訳『新訂 魏志倭人伝・後漢書東夷伝・宋書倭国伝・隋書  倭国伝ー中国正史日本伝1』岩波書店、1985年
4)陳寿『正史 三国志』;裴松之注、今鷹真、井波律子(他)訳、筑摩書房、1993年
5)房玄齢(他)『晋書』;
『法顕伝・宋雲行紀』;長沢和俊訳注、平凡社、1971年
6)沈約『宋書』;3)『後漢書』の記述参照
7)蕭子顕『南斉書』;
8)姚思廉『梁書』;
9)姚思廉『陳書』;
10)魏収『魏書』;
11)李百薬『北斉書』;
12)令狐徳?(他)『周書』;
13)魏徴、長孫無忌『隋書』;3)『後漢書』の記述参照
14)李延寿『南史』;
15)李延寿『北史』;
16)劉?(他)『旧唐書』;石原道博訳『新訂 旧唐書倭国日本伝・宋史日本伝・元史日   本伝ー中国正史日本伝2』岩波書店、1986年
17)欧陽修、宋祁『新唐書』;
玄奘三蔵『大唐西域記』;全2巻、水谷真成訳、平凡社、1984年
18)薛居正(他)『旧五代史』;
19)欧陽修『新五代史』;
司馬光『資治通鑑』;
20)トクト(脱脱)(他)『宋史』;16)『旧唐書』の記述参照
21)トクト(脱脱)(他)『遼史』;
22)トクト(脱脱)(他)『金史』;
23)宋濂(他)『元史』;16)『旧唐書』の記述参照
『元朝秘史』;全2巻、小澤重男訳、岩波書店、1997年
C・ドーソン『ドーソン蒙古史』;田中?一郎訳、三田史学会出版、1933年
C・ドーソン『モンゴル帝国史』;佐口透訳注、平凡社、1968〜73年
マルコ・ポーロ『東方見聞録』;全2巻、愛宕松男訳注、平凡社、1971年
24)張延玉『明史』;
内藤虎次郎『清朝史通論』;弘文堂、1944年
中国現代史研究会編『中国国民政府史の研究』汲古書院、1986年
野村浩一・山内一男(他)編『岩波講座 現代中国』、全6巻・別巻2、岩波書店、1989   〜1990年
竹内実監修『毛沢東集』、全20巻(補巻を含む)、蒼蒼社、1983年
ジョセフ・ニーダム著、礪波護(他)訳『中国の科学と文明』全6巻、思索社、1991年
ジョゼフ・ニーダム著、牛山輝代訳『中国科学の流れ』思索社、1984年
宋応星撰、藪内清訳注『天工開物』平凡社、1979年
 
おわりに
 
 今回のリスト作成にあたり、司馬光『資治通鑑』及びいわゆる「二十四史」の日本語訳が進んでいない実状を知り、率直に言わしていただくと、驚いた。日本は世界一翻訳文献が充実しており、高校の世界史や日本史の教科書や参考書に掲載されるほど著名な歴史資料ならば、比較的容易に利用できると考えていたからである。現実には、インターネット上で共同翻訳を呼びかけ作業しているところである。まずは、こうした取り組みが出版物として日の目を見ることを切に祈りたい。
 参考ながら、毛沢東が「二十四史」を熱心に読んでいたと毛沢東の秘書の一人が証言している。毛沢東が中国の歴史書や古典の教養が高く、読書に熱心であったことは、有名である。その教養は、人心掌握や、時に帝王学としての中国統治に役立てられた。漢籍などの専門家に読者を限定することは、一般教養の観点から好ましくない。日本語訳を通じて多くの読者が増えることは、中国人を理解するのに貢献が高く、多様な読者を通じて学問発展にも貢献すると愚考する。例えば、毛沢東研究においてもしかりである。
 今日、日中間の相互理解への重要度が増す中、貴重な資料に触れる機会が増えることは、文化にとどまらない貴重な財産となる。翻訳の過程から新発見の可能性もありうる。出版不況にめげず、ぜひこうした資料の翻訳を完成して欲しいと願う。