現代中国の政治家、毛・鄧・江・胡
　
ー地縁にみる国家主席像ー
　
渡　邊　　　理
　
はじめに
　
　2006年9月24日、中国共産党は、上海市トップの陳良宇・党委員会書記（党中央政治局員）を、汚職事件に関与したとして解任した(1)。胡総書記が不正に強行姿勢を示し、政権基盤の強化を図ったとして、中国国内外の注目を集めた。
　その際、「上海閥」という言葉が出てきた。これは、中国共産党や政府指導部内で、上海出身や上海での勤務経験を通じて築いた人間関係で、これと結び付いた集団をさす。同様に、北京閥、広州閥、湖南閥、安徽閥などといった集団も存在する。こうした集団は中国国内外に広大なネットワークを有し、集団の構成員に対する幅広い互助や協力を実践している。
　ここでは、中国を代表する国家主席を、地縁との関連で考察する。代表例として、毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤の４氏をとりあげる。
　社会学の研究姿勢の例として、楊麗君氏が指摘している。「文革を理解するときには、国家と派閥の相互作用という双方向的な視点が必要である」(2)。それは文革のみならず、中国の地縁という派閥を含む社会分析に必要である。
　出身地別の中国人の性格について、宮崎正弘氏の『出身地でわかる中国人』(3)がある。この著書は、中国の33すべての省、市、自治区、特区を踏破した著者が、地域ごとの多彩な「お国柄」を、新書本にコンパクトに紹介している。それは、著者の長年培ってきた膨大な経験、知識、人脈をもとに、まとめられている。
　国家主席については、許介鱗(きょ　かいりん)・村田忠禧(むらた　ただよし)編『現代中国治国論　蒋介石から胡錦濤まで』(4)を参考にする。この著書は、日本と台湾の研究者が中国の歴代国家主席と台湾の歴代総統を４人ずつ比較検討した意欲の高い伝記集である。本稿で扱う４人の国家主席に加え、蒋介石、蒋経国、李登輝、陳水扁の４人の総統についても、興味深い記述が多い。台湾日本綜合研究所がＮＰＯ民間ボランティア組織という立場で大胆に検討している。
　
第１章　毛沢東と湖南省
　
　毛沢東を一言で表現すれば、「破天荒」な人物と言える。アジア史上初の共産主義国家を建国したり、冷戦期において東西いずれの陣営にも属さない「第三世界」といった秩序形成を目指した一方、文化大革命等で中国に混乱を齎(もたら)した事実があるからだ。創造と破壊の両面を兼ね備え、世界史上、毛沢東と比肩できるほど影響力のあった人物は指折り数えるほどしか存在しないだろう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「湖南省」は、毛沢東の出身地である。省都であり、馬王堆漢墓で知られる長沙市と、李白、杜甫、白居易らの漢詩の舞台として知られる岳陽市が、有名である。毛沢東がかつて「湖南省出身の田舎者（中国語で土包子(トゥバオズ)という）」と呼ばれたことがあったほど、中国史としては、周辺地域扱いだった。
　宮崎氏は、湖南人をこう紹介している。「湖南人は「大胆講話、覇権野蛮」を略して「肝講＋覇蛮」な性格をもつ人びとだという。世の中をひっくり返す、歴史を画期する胆力をもち、都会にはない野蛮で猛悍な人が突出する地域である」(4)。つまり、「湖南省は過激派の土壌」であると。
　湖南省出身者には、毛沢東や劉少奇、彭徳懐をはじめ、中国近現代史上、著名な政治家を多く輩出している(6)。辛亥革命の功労者の一人の宋教仁は、袁世凱の刺客により上海で暗殺されるが、覇気のある胆力のすわった人士として、大陸浪人として知られる宮崎滔天(みやざき　とうてん)が「孫文より見込みがある」と評していた。また、「燃えやすい性格なのか、それとも都に遠い遠隔地であるがゆえの浪漫主義がそうさせるのか。湖南省は毛沢東、劉少奇のほかにも、近年では胡耀邦、豪腕宰相として有名な朱鎔基(しゅ　ようき)前首相を輩出した。また台湾野党の宋楚瑜(そう　そゆ)の親の故郷でもある」(7)。
　ところで、湖南省にゆかりのある有名人の一人に、石達開（翼王）がいる。太平天国の乱 (1851~1864年）の際、湖南省を含む中国南方を広く転戦し、軍功のあった将であった。実直で清廉潔白な英雄として、毛沢東が生まれた頃、湖南省で敬愛されていた。特に彭徳懐は終生、理想の人物として尊敬していた。小島晋治『洪秀全と太平天国』(8)でも指摘されているように、太平天国研究は、毛沢東時代の中国共産党は中国革命の先駆けとして高く評価していた。「天朝田畝制度」は、地主から解放し、平等な耕作を農民にさせたとして土地改革の先駆けとしていた。また、太平天国軍の、人民に極力迷惑をかけないことを主旨とした規律は、人民解放軍に導入された。毛沢東が湖南省出身である権威付けや、湖南省出身で後の政権担当者をはじめとする同志をまとめるアイデンティティとして、太平天国を持ち上げたのかもしれない。今日では、太平天国の研究は、毛沢東時代のような政治のしがらみに影響されず、事実に則した実証研究がなされている。
　毛沢東は、結果としては革命をともに闘った同志を切り捨てていった。そして、カリスマ性を有する独裁者ないしは皇帝となった。毛沢東は、浪漫的情熱的革命家にとどまらず、湖南人離れした冷徹な現実主義の政治家であった。『中国治国論』で李海文氏は、毛沢東の功罪をコンパクトにまとめている。毛沢東関連の図書では、同書の出版の翌年には、ユン・チアン、ジョン・ハリデイ著　土屋京子訳『マオ』（講談社、2005年）が出版された。この著書は、サブタイトルにある「誰も知らなかった毛沢東」のフレーズのように、毛沢東批判の禁忌に挑戦した作品である。膨大なインタビューをもとにしてした記述は多くの衝撃を与えたベストセラーとして高く評価される一方、その著書の事実誤認や研究姿勢など批判する意見がある。『マオ』批判の代表として矢吹晋氏の書評(9)がある。ちなみに『マオ』は中国語訳を中国本土で販売する計画を著者は持っていたが、中国当局の干渉により実現しなかった。また、『マオ』出版を契機に一時、毛沢東を批判するゴシップまがいの著書も数冊出版されたものの、今のところ目立つ毛沢東研究の著書は見られない。
　毛沢東は大躍進政策や文化大革命などの破壊的政策を通じた行為で多くの人民を殺した事実はある。それは、明末の農民反乱軍の指導者の一人で、文字通りの殺人狂として知られる張献忠のような性格異常者だからではない。『史記』に典拠する「狡兎良狗(こうとりょうく)」の語がある。兎狩りのために貢献した優れた猟犬が、兎を捕らえた途端、不要とされ煮殺される。つまり、必要な時には結構利用されるが、用がなくなると惜しげもなく捨てられてしまうことである。毛沢東は漢の劉邦や明の朱元璋のような中国史の事例を知っていたが故に、自分の権力を守るために常識離れした非情な行為をとったのであった。つまり、過去の見える人であった。
　
第２章　鄧小平と四川省
　
　本章では、鄧小平について触れるが、一言で言えば、毛沢東とは対称的に未来の見える人であった。
　「山椒は小粒でもピリリッと辛い」という言葉があるが、ハバネロ（世界一激辛といわれるメキシコ産の唐辛子）級に辛辣で豪腕なのが、鄧小平といえよう。
　四川省は、世界遺産に登録されている峨眉山や楽山大仏といった名所旧跡をはじめ、パンダのふるさととしても日本でも知られる土地である。中国では、古くから天府之国として有名である。 天然の要塞の如き険しい山々の中で豊かに独立した営みがあるからである。
　宮崎氏は、四川人を紹介している。「林悟堂は『中国的民性』という古典的名著のなかで「忍耐強きは東洋の特徴だが、中国は例外的で弱肉強食の世界だ。権利を主張する特徴がある。しかし、その中国にあって、とりわけ四川省の人は忍耐強い」と驚いている」(10)。日中戦争時、日本軍による激しい重慶空爆を耐え抜いた歴史からも、四川人の忍耐強さは実証できるといえる。
　「四川省は昔から独立精神が旺盛で、北京、上海 なにするものぞ、という反骨精神が強い。四川省生まれの鄧小平は、毛沢東の社会主義路線の硬直化した諸施策をやんわりと否定して、”走資派”と罵(ののし)られながらも堂々と改革路線を敷いた」(11)。
　他方、四川人の気質として、莫邦富（モー・バンフ）氏は次のような興味深い紹介をしている。「四川省の人間、特にどことなく桃源郷を思わせる成都の人間の気質には「小富即安」というところがある、とよく指摘されている。つまり、ちょっとばかり豊かになればもう満足してそれ以上の進歩を求めない」(12)。
　小生は、四川人は、中国で一番激高しやすい方々だという印象を有する。例えば、1911年（干支紀念法で辛亥の年にあたる）10月10日の武晶蜂起を発端に清朝を打倒した辛亥革命が発生した。その武晶は四川省にある。国有鉄道現場での労働者に対する待遇、および鉄道が政商の類に売却されるといううわさから、蜂起がなされた。今日でも農民の暴動が流血に至るほど激しくなり、新聞に報道されることが多い地域である。
　要するに、四川人は保守的性格であると、小生は考察する。普通に生活を営む分には必要以上の物資や発展や変化を望まず、主体的に社会変革といった働きかけは乏しい。しかし、面子に係わる地域間の競争があった時や、自分達の身に危険が迫ると感じた時、恐ろしいほど激しいエネルギーを発揮する。常時、反骨の精神を四川人は有しているわけではなく、他地域に対する嫉妬心や対抗意識はさほど強くないと見られる。
　鄧小平について述べる時、同氏が「客家(ハッカ)」の出身であることを忘れてはいけない。『広辞苑　第３版』（岩波書店、1983年）には次のように客家を定義している；中国の広東省を中心に東南部の諸省において、かつて華北から南下移住してきた漢族の子孫として、原住民とは区別されてきた集団。独特の習俗を保ち、言語も独自の方言をなす。
　林浩著・藤村久雄訳『アジアの世紀の鍵を握る 客家の原像』(13)ではこうある。客家はその名のとおり「よそ者」の意味であり、現地の人々から区別され、山間の狭い土地に居住することが多かった。狭い土地を開墾し、女性に纏足をさせることなく、懸命に米作をしていた。一方、山間部をまわる行商をする人々もいて、それが客家ならではの広域ネットワークを形成することにつながった。 客家は先住の人々などからの差別的待遇を受けたこともあり、強い自意識をもつことが多く、客家同士の団結力も強い。また、教育熱心であり、科挙にも多くの合格者を出してきた。ちなみに、皇帝直々の面接の殿試でも、北方系の平仄の言語を有することから、南方訛での苦労は比較的少なく、合格できた。
　客家出身の有名人は、鄧小平以外にも、前章でふれた洪秀全をはじめとする太平天国関係者がいる。孫文、リー・クアンユ（李光耀）、李登輝のような政治のリーダーがいる。他にも実業界では、インドネシアのカリマンタン島西部で「蘭芳公司」を創建した羅芳伯や、タイガーバームで有名な胡文虎など、東南アジアで実力のある華僑を出している。また、客家の文人としては、朱子学で有名な朱熹や、日本にも縁の深い郭沫若などを、輩出している。極度にいえば、ヨーロッパにおけるユダヤ人の如く、多彩な才能を開花させ活躍してきた漢民族の一集団である。
　『現代中国治国論』では、政治家鄧小平について、次の紹介がある。「毛沢東時代に鄧小平は「皇帝・毛沢東」から戦略を学び、「宰相・周恩来」から行政の手腕を学んだといってよい。三度失脚し、三度復活した（原文＝「三下三上」）が、この過程で鍛えられた政治能力、調整能力が全面的に発動されたのは、1978年12月の十一期三中全会で党内の主流派になってからであった」(14)。また、「「唐辛子風味のナポレオン」は、党内では、「厳父毛沢東と慈母周恩来」の双方の薫陶を受けて 革命家、実務家になり、両者に優るとも劣らないほどの統治能力を発揮した」(15)とも評している。
　具体的で理解しやすい説明である。しかし、小生は劉少奇の存在も軽視できないと考える。例えば、楊麗君氏は次のように述べている。毛沢東が失われつつある権力を取り戻すために、劉少奇を打倒したという、一部の研究者の解釈に対し、毛沢東は官僚体制の改革を推進するために、劉少奇を失脚させた。なぜなら、劉少奇らは建国初期から積極的にソ連モデルの専門化した官僚体制（つまり、テクノクラートによる官僚体制）を推進しており、既存の官僚体制の維持を志向していた。それに対し、毛沢東は大衆動員の集団化を理念としていたので、劉少奇らは障害となった(16)。毛沢東は延安時代、コミンテルンに忠実でソ連モデルを志向していた王明を排除していた。それに対し、官僚体制の復権の旗幟となり、劉少奇の経済思想をはじめ官僚主導の政治体制にしたのが、鄧小平である。改革の総設計師として知られ、出身地である四川閥という地縁にとらわれず、上海から経済改革を成功させたほどの実力者である。それは官僚体制の背景なしではありえなかった。
　不倒翁の如き忍耐強かった鄧小平も、晩年になると自身の感情をうまく抑制できなくなった。例えば、1987年、日本の外務省高官の発言をめぐり、鄧小平は次のように激高した。「そもそも日本は、世界のどの国よりも中国に対する借りが多い国だ。それでもわれわれは、国交回復の時に戦争賠償の要求を出さなかった。にもかかわらず、日本は中国側の善意を踏みにじっている。それだけではない。私がこんな発言をしたら、日本の外務省高官は「鄧小平は雲の上の人になったのではないか」と反論してきた。”雲の上の人”とは”老糊塗”つまり”ボケ老人”ということだそうだ。”老”ということは正しいが”糊塗（ボケ）”はまだ私には当てはまらない。政権内部でも私に対する批判がないわけではないから、余計に頭にくる。実にけしからん」(17)。
　これは、日本の外務省高官の揶揄(やゆ)を中国側が誤訳してしまったために発生したトラブルである。結局、件の高官は、騒ぎの責任をとらされ、降格人事の憂き目をみた。鄧小平の感情抑制できずに激高してしまう姿勢は、1989年の悲劇（天安門事件）につながる要因になった。
　また、鄧小平は、官僚のトップという性格から、高級幹部による官倒（官僚によるブローカー行為）をはじめとする不正行為を、黙認せざるをえなかった。もっとも鄧小平の血縁とて同様なことをしていたのだから、とめることはできなかった。それに対し、学生や知識人が不正を容認しないという怒りの原因となった。
　さらに鄧小平は、西欧の民主主義に対しては、強い不信感があった。そのため、西側の事情に理解のあった胡耀邦や、学生運動に同情的であった超紫陽を、政権から排除した。そして、ついに1989年6月4日、天安門事件という暴挙に出たのだった。
　結論として、鄧小平は、四川人を想起させる忍耐強さと、自己保身のために示した強烈な激高、及び客家を想起させるコスモポリタン的広い視野と現実主義の性格を兼ね備えた人物であった。未来の見えるというのは、経済改革の成功のみならず、次の政権以降の道筋をつけたことを意味する。つまり、アメリカと正面衝突をせず、経済成長を優先させる姿勢である。また、第４章でふれるが、鄧小平は毛沢東と違い、後継者の育成にも力を入れていた。
　
第３章　江沢民と上海
　
　本章では、鄧小平路線を踏襲した江沢民について考察する。
　上海は、言わずと知れたアジア屈指の国際都市である。上海は、南宋の時代、町レベルの自治体都市として骨格を形成した。上海が魔都と呼ばれるほどの都市として本格的に発展しはじめたのは、清代になってからであり、日本でいうと東京より少し歴史は浅い。
　宮崎氏は次のように上海人を紹介している。「上海のビジネスマンは計算高く、妙に気取っていて、執着心が強く、まるでイギリス紳士を中国化したようだ」、と筆者の友人の感想を紹介した上で、「上海人は国際情勢に明るく、議論も精緻を極める。ー（中略）ーグローバルな国際感覚を発揮するが 内心では外国を蔑視し、しかし平素は恭順を示す。あからさまな媚態をみせないが、経済先進国を崇拝する傾向は、上海の女性がアメリカ人や日本人との結婚に憧れる現象をみてもわかるという」(18)。
　小生自身、上海あるいは華中方面出身以外の中国人から上海人に関する芳しい評判をほとんど耳にしたことはない。「けちなくせに見栄っ張り」とか「ずるい」といった評価であり、他地域の人々に嫌われる傾向があるのが実状である。
　江沢民は、1989年の天安門事件で、当時 上海における学生運動を鎮圧した。その功績が認められ、ポスト鄧小平の座を射止めた。当時としては予測できなかった人事であった。しかし、よくよく考えてみると、鄧小平の人事は合理的であった。江沢民は上海交通大学出身のテクノクラートであった。ちなみに上海交通大学は、北京にある清華大学と比肩する理系の名門大学である。ここでいう交通は通信関係もふくんでおり、最先端のＩＴ情報産業の担い手を数多く輩出している。 上海を中心とした長江デルタにおける経済成長には、上海閥の有力者が適任であった。また、政治的に鄧小平と同じく保守的であったので、毛沢東のように極端に政治混乱を引き起こすようなことはせず、経済成長を最優先に政権運営すると期待された。いわば、中国の金庫番として経済を発展させつつ、国際的には原理原則を主張しつつも、本気で対外戦争をしないことで国際政治上深刻な対立を引き起こさない政権運営をした。
　原理原則の主張は、日本の歴史認識をきちんとすべしとする旨や、台湾は中国領という例があげられる。そのため、周辺地域の反発や懸念を受けた。特に台湾については海峡の緊張にともない、かえって陳水扁総統のもと、台湾を団結させることとなった。方法としては決して礼賛できない。しかし、中国の政権交代にかかわらず、原理原則を変えないと世界に向けて表明したことで、次の政権以降、実務外交をとりやすくした側面もある。それについては次章でもふれる。中国にとり、江沢民のいわゆる強面外交は必要な過程であった。
　他方、安定した経済成長のためにはアメリカと事を構えない姿勢を貫いた。例えば、1999年５月、ＮＡＴＯ軍が、ユーゴスラビア（当時）の中国大使館を誤爆し死傷者を出したとき、中国国内では反米デモが発生した。アメリカに対し、中国政府も正式に抗議をしたが、７月ぐらいにはアメリカから謝罪があったとして抗議をやめ、反米デモも沈静化した。つまり、一定程度の原理原則は伝えるものの、ナショナリズムを喚起させ、本気でアメリカと対立するには至らない。のちに海南省上空で米軍の偵察機が中国空軍機との接触事故を起こし、中国軍機のパイロットが死亡する事件もあった。その際、４人の米兵は公開銃殺どころか、ホテルで丁重に軟禁されたのち、無事アメリカに帰国できた。中国は主権侵害をされたものの、冷静に対応し、中国としては安易な妥協をしないという面子を保ちつつ、アメリカの面子を壊さない程度の謝罪や損害賠償を得るという実利を得た。
　『現代中国治国論』で朱建栄氏は、江沢民が北京閥との権力闘争に勝利した様子を、次のように紹介している。彼は、李鵬、陳希同らライバルには「弱み」を見せながら、力を蓄え、そのイジメ（苛め）、挑発にも乗らず、我慢を重ねた。だが、九五年、北京市副市長王宝森の自殺事件をきっかけに、一気に陳希同を辞任に追い込み、形勢を逆転させた。九六年に入って、李鵬首相は自ら、「江沢民をはじめとする指導部」と公の場で述べ、それに従う姿勢を初めて表明した。「一歩下がって二歩前進する」柔軟性と的確な政治感覚によって、江沢民の指導者としての地位はついに不動のものになった。九七年の鄧小平死去を契機に、他のあらゆる派閥や勢力をも上回る「江沢民人脈」が確立されるようになった。いつ失脚してもおかしくないと見られていた暫定人事が、ライバルのいない「江沢民体制」に変身したのは、過渡期政治の指導者の典型的な身のおき方だったと言えよう(19)。
　筆者の朱氏は、上海出身というためなのか、率直に言えば、少々江沢民に贔屓(ひいき)めの分析である。それでも簡潔で要領をえた権力闘争についての分析である。北京閥要人の汚職をきっかけに権力闘争に勝利する事例は、次章で述べるように、意趣返しで、上海閥が憂き目をみることになる。中国における権力闘争もまた、簡単な決着はなく、いつ反撃がされるのか油断できない厳しさがある。まさに「ダモクレスの剣（the sword of　Damocles）」である。
　江沢民の過ちをあえて述べると、「愛国主義」の強調といえる。愛国主義についてベアテ・シロタ氏が次のように指摘している。「ナチス・ドイツでは愛国的に人種を純化するという名目で、数百万のユダヤ人が毒ガスで虐殺されるという狂気が起こりました。私の親戚も大勢犠牲になっています。「愛国心」という言葉には、無防備で、もろい人たちを縛る悪魔的で、催眠術的なパワーがあるのです。権力者はそのことを知っていて、利用するのです」(20)。中国は、愛国主義を標榜した日本の軍国主義の侵略を受けた。また、文革で毛沢東個人崇拝を通じての愛国心を喚起する美名のもと、中国全人民は政権内部の権力闘争に巻き込まれた。その結果、隣近所単位で相互監視やリンチなど悲惨な経験した人民は多い。そうでなくても中国人には5000年の歴史に裏付けられる常識があるので、多くの中国人は素直に政府の強調する愛国主義を信用しなかったり、時には反発するのは自明の理である。
　ただし、日本の一部の政財界人や知識人などが、歴史認識を江沢民はくどく言いすぎたという意見に対し、小生は必ずしも賛同しない。例えば、岡部達味氏は、日本人の抱いた江沢民への感情を巧みに代弁している。1998年11月、江沢民主席の訪日に際して「謝罪」（道歉(どうかん)）という言葉を文書に残せとしつこく食い下がった矮小な姿勢が、「寛大な大人」とは似ても似つかないものであることが明らかである。この行動がどれだけ日本人をしらけさせたか、そしてこれによりせっかく江沢民訪日の機会に成立し、将来の日中友好の基本方針を決めた「友好協力パートナーシップ」にいかに暗い影をおとすことになってしまったのか、悔やんでも悔やみきれない(21)。また、岡部氏は次のようにも述べている。日本人がかつて持っていた「寛大な大人」としての中国人像は、いまや完全に消え去りつつある。その代わりに、「金のためなら何でもする中国人」というステレオタイプが取って代わりつつある。いずれも安易な一般化に基づく誤解である(22)。いつまでも中国の大人としての対応や度量に日本は依存するべきではない。ましてや国連の常任理事国入りを希望したほど主体的国際貢献を志したのならば、なおさらである。
　岡部氏は中国側の考えについても分りやすく紹介している。例えば、靖国神社について、2001年、小泉総理当時のことを次のように記している。中国側と接触しただれもが、「八月十五日はだめだ」というだけで、どうしてかということを明確にしないままでいた。この筆者はそれを疑問に思い、唐家?(とう　かせん)外相（当時）に聞いてみたことがある。その回答ははなはだ要領を得なかったが、後で思い至ることがあった。中国式思考で日本人にとっての八月十五日を見れば、それは日本が戦争に負けた「国恥記念日」に当たるということであった。だから、日本の総理が八月十五日に靖国神社を参拝するということは、敗戦の雪辱、つまり報復（の誓い）のために行くのだということになる。唐家?氏は日本通なだけに日本人にそういう意識はないことを知っていたので、日本人に向かって本当のことをはっきりいえなかったのだろうと思われる(23)。また、「かつて世界に冠たる文明を誇った中国人の近代における屈辱感は、日本人には肌で理解することはできないであろう。弟子筋であった日本から侵略され、やっとそれを逃れたと思ったら、またしても日本の金と技術に依存しなければならなかったというやりきれなさが、どれほど日本人に実感されているであろうか」(24)とも記している。小生自身、中国人にとりアメリカは憧れになりうるが、日本は目標どまりであると漠然と感じていたが、具体的に述べられていて分りやすかった。
　岡部氏も強調するように、相互理解は大切である。そのために誤解から虚像を引きずるのではなく、冷静に観察し知ることが大切である。また、江沢民の章で特に学習したことは、一つの事象のみで一つの政権の評価を断定したりせず、また、政権ごとに分析を区切るのではなく、中華人民共和国史という連続した視点からの政権分析も重要である。
　江沢民は、権力闘争でより強固な権力基盤を得ることよりも、安定した持続的経済発展に関心があった分、鄧小平が見込んだような中国の金庫番という役割を果たした。また、中国人社会ではなぜか不人気な上海人だった分、個人としての評価は低いものの、特別に優れた業績や重大な過失はなく、中国にとっては必要な過程を歩んだ国家主席であった。次章で考察する胡政権にとり、過渡期をになったのみならず、前述したように世界に向け中国の原理原則を表明したり、愛国心の強制は失敗するという教訓を多く残してくれたのが、江沢民だった。つまり、当時の状況からして無難な政権運営だったのにもかかわらず、現時点では、江沢民は過小評価気味であると考察する。
　
第４章　胡錦濤と安徽省
　
　「安徽省」には、世界遺産として有名な黄山と省都・合肥市がある。
　宮崎氏は次のように安徽人を紹介している。「安徽商人は、古来、中国の十大商人として重きをなし、一部に「儒商」の源流とまで評価されるのは、洞察力に富み、判断力が的確だからといわれる。政治的発言にはことのほか慎重沈着、政治的本能があってもそれを人前では隠すとされる」(25)。それは温家宝首相らを輩出した天津人の性格にも共通する部分でもある。
　江沢民は、胡錦濤と政権交代した際、胡主席は安徽省という上海閥にとり後背地にあたると考え、上海閥にとってそう害がないだろうと考えていたと考察する。しかし、実際は北京閥が胡政権を支える形で江沢民時代の報復をし、政権の主導権を握った。上海と北京の中間点にある安徽省の人々は、機を見るに敏であり、現実主義的選択をしたのである。
　北京閥について宮崎氏は次のように紹介している。北京人の特色は「愛国」をつねに鼓吹(こすい)する政治人間が多い一方、下町へ行くと人情も厚い(26)。さらには愛国を吹聴する見栄っ張りの証左として多くの面で、否定的論調である。小生は宮崎氏の北京人像はどうしても首肯できない。「多くの中国人は虚栄心が強くて、でっかい帽子（「大帽子(タマオツ)」；中国語の俗語で、その人にふさわしくない、肩書きや地位をいう）をかぶるのが好きだ。なにか起きれば眼をひらいて前方をみるが、おおざっぱに遠くから眺めて、それでおしまいだ」(27)、と毛沢東が語っている。なにも北京人に限定した話ではない。そもそも揚州生まれの上海閥の江沢民の存在はどうなるのか。北京人は政治の都の住民としてのプライドの高いことは事実である。ただ、政治に関心がある一方、経済は駄目のような伝え方では、ステレオタイプと言われかねない。また、胡錦濤政権は、天津を経済特区レベルで開発を進めている。あえて言えば、政治は北京で、経済は天津でといった首都機能を分散した地方分権であり、アメリカの連邦制度を模した政策と考察する。政治に拘泥する見栄っ張りの北京人像では、とんでもない見落としとなりかねない。
　ちなみに北京人は中華民国の時代、南京を首都とした都合で北平(ペーピン)と改称させられた。そのことを怨みにし、今でも蒋介石を嫌う人は少なくないと聞く。北京人と上手につきあうコツをあえていえば、都の住民としての面子を汚さないことである。その点、2008年を北京五輪開催とするかわりに、2010年に上海万博を開催するという振り替えは、上海閥のしたたかさを如実に示したものである。上海人は陰口で北京人を田舎者呼ばわりしていながらも、実利を得ているからである。もっとも北京人とて上海人の腹の中をうかがい知れないほどのお人よしではない。犬猿の仲に譬えられながらも、巧みにバランスよく利益を分け合う様子は、国際外交の高度な駆け引きの様相である。
　『現代中国治国論』では、村田忠禧(ただよし)氏が胡錦濤の章を担当している。胡錦濤政権の成立過程や2004年４月時点までの状況を記している。政権指導者育成のために若手の抜擢を考えていた鄧小平は、胡錦濤について次の点で注目していた。1987年、胡耀邦が辞任した後、胡錦濤は胡耀邦批判をやらず、恩師への義理人情と改革開放路線への強い信念を表した。1988年、貴州省で突発した学生運動をすばやく対応して沈静化させた。1989年、チベット動乱の平定にあたっては、軍服にヘルメット姿という出立ちで現れ、強硬な姿勢を示した。胡錦濤は改革開放を手堅く進め、党と国家の危機を的確に処理した。鄧小平から見て、まさに手堅い人材であった(28)。つまり、江沢民同様、保守的政治思想を有し、仕事の出来る人材を、鄧小平は好んだ。また、ＳＡＲＳ（Severe Acute Respiratory Syndrome；中国広東省珠江デルタ地帯で流行し始めた非典型肺炎という新型の疫病を指す）問題に際しては、果断な対処を実践した。例えば、陣頭指揮（のち、呉儀副首相が担った）をとったり、迅速に衛生部党組書記（日本の厚生労働大臣に相当する）や北京市長ら関係者を更迭した。ＳＡＲＳ対策を契機に北京閥とのつながりを確保しながら、「はじめに」でふれたような上海閥に打撃を与えたことに通じる政治劇となる。後継者任命から権力闘争の過程まで、江・胡両政権は類似している。
　江・胡両政権では上海閥・北京閥がそれぞれ激しい権力闘争に勝利した末、政権の性格づけができるくらい顕著に政経様々な分野で活動している。今後も上海閥・北京閥のいずれかが政権交代の度に権力闘争の主体を担い続けるかといえば、小生は早計にイエスとは答えない。そもそも地域閥は、それぞれに独自のネットワークを有し活動している。中国解体論のような極論は唱えるつもりはない。しかし、可能ならば、政権中枢を担いたいと言う地域があっても不思議ではない。例えば、ポスト長江デルタ経済圏確立をねらうために必要と判断する場合が考えられるからである。
　余談であるが、小生は中国の将来を観察するとき、中国の南、特に広東省と海南省に注目する。中国史をみても南宋の時代以降、華中および華南では、農業生産力を高め、商工業を発展させ、人口を増加させている。つまり、華北以上に経済力をつけている。明王朝のように南方から統一王朝を建国したのをはじめ、清王朝時代をみてもアヘン戦争に始まる帝国主義のヨーロッパ列強による中国侵略や太平天国の乱の発生。さらに中華民国期をみても孫文の出身地の広東省は孫文の政治活動の拠点であり、蒋介石による北伐の出発点でもある。海南省は広東省から分離して省に昇格させた地域である。当時は「一国二制度（中国語では、一国両制）」の将来台湾との統一が実現した際のモデル地域として設立したとか、南沙諸島問題をにらんで軍事拠点とするためなどと、日本では観察されていた。しかし、小生は中国のミニチュアとしての意味でのモデル地域ではないかと推察する。民族、豊富な鉄鉱石の資源、観光、見方を変えれば、中国の縮図として見えてくるからだ。現に海南省で成功した事例のいくつかは、中国全土にも影響している。例えば、リゾート開発はバブル期の日本の姿を髣髴させるほどの勢いで進行している。流行面でも中国人はもともと喫茶店でお茶を飲みながら間食という習慣はあまりなかった。コーヒーよりもお茶が圧倒的に嗜好されてきた。上海バンドで有名な上海ですら、容易に喫茶店を見つけられなかった。海南省で海外の観光客のニーズに応じる意味で喫茶店を経営したところ、利益を得れた。今日では、中国の沿岸部の都市でコーヒーを飲むのにはあまり不自由しなくなった。つまり、中国の将来を観測するのには、北京と上海だけでは不十分で、香港なり広東省にしっかりした拠点が必要である。ちなみに客家系の方々が多く活躍している地域でもある。
　胡錦濤政権は。今年（２００７年）の全人代でも、貧富の格差と汚職の是正を強調していたが、容易ではない。格差問題は、地域や個人レベルをはじめ、多様であり、深刻である。胡政権は「和諧(フーシェ)社会（調和の取れた社会）」を標榜するが、実際は「喝血(フーシェ)社会（庶民の生き血を啜って特権階級だけが繁栄している社会）」と揶揄されるほどである。余談ながら、同音異義語での言い換えは中国人もまた、巧みである。例えば、江沢民時代に「向前看(シャンチェンカン)（前向きに生きよう）」と政府が標語を出せば、同音で「向銭看（金に向かって生きよう）」と拝金主義の横行を皮肉るのである。実際、鄧小平の経済至上主義路線による不平等社会の様相は、日本以上に深刻であり、庶民の怨嗟の声も高い。個人に対するセーフティネット（つまり、就業対策や福祉政策をはじめとする全人民に対する生存権の確保）などがなければ、貧困化する国民の数は増加の一途をたどる。また、地域がそれぞれの利益追求の競争する中で、何らかの政策がなければ、地域間格差は拡大する。中国国内の安定なしで持続的経済成長は不可能であり、崩れた社会バランスの是正は急務である。
　また、汚職の問題にしても、中国史における賄賂の歴史からして悠久であり、一朝一夕での解決は容易ではない。例えば、大衆紙・北京青年報が2006年11月15日に伝えたところによると、贈収賄は紀元前 873年の周代の青銅器の記述まで遡れることが実証されたという。貴族が役人に賄賂を送って、違法に私的農地の開墾を進め、多くの奴隷を所有したなどという内容の犯罪での追求を逃れたという出来事であった。ざっと3000年におよぶ因習である(29)。
　楊麗君氏の次のような指摘は、文革期のみならず、中華人民共和国に連続している課題である。「文革直前の中国は、幹部の特権化、知識人の不満、幹部と大衆間の信頼の低下、農民と労働者デモの頻発などの様々な社会問題を抱えていた。これらの社会問題は建国後一連の国家政策が実施された結果であるため、文革以前に国家で実施された諸政策が後の文革期における社会派閥の形成、発展に制度的な背景を提供したといえる。この意味で毛沢東の呼びかけは社会成員が派閥を形成し、不満を噴出して自己利益を実現する導火線であるといえる」(30)。格差や汚職、それに環境に象徴される国内問題は、安定した政権運営を持続させるために、いつまでも先延ばしすることはできない。
　一方、実務外交では、着実にこなしている。対米関係では首脳の相互訪問を実現し、北朝鮮の核凍結問題を米中の深刻な対立まで発展させないように、引き続き米中間で協議や交渉がなされている。日本に対しては、安倍政権になり、すぐに首相の訪中を受け入れたり、４月には温家宝首相の訪日を実現したりと、冷え切った日中関係修復を進めつつある。また、台湾に対しては、江政権のような海峡を武力で緊張させることを改め、実務を前面に出している。また、国民党党首の連戦氏を中国本土に招待するなどし、柔軟ながらしたたかな外交を展開している。現に陳水扁総統の支持率低下にもあらわれている。江政権の北風を思わせる強面外交から、胡政権の太陽を思わせる実務外交への転換は、江沢民時代にやるべきことあるいはやらざるをえなかったことを実施したおかげもあり、大胆に巧妙な実務外交を可能にしている。
　今日の中国と日本の外交展開を例に比較してみると、中国の方がはるかにたくみである。胡政権は、石油をはじめ世界各地の天然資源を自国向けに獲得すべく、文字通りの世界戦略を展開している。その際、多くの国々との交渉において好材料になっているのは、毛沢東時代、冷戦下の東西いずれの陣営にも属さないとした「第三世界」を通じての外交でのつながりであった。たとえ、実質建前レベルの交流だったとしても、顔つながりができていて、交渉する素地ができている。毛沢東の政治思想重視の外交政策から胡政権の実務重視の外交政策への転換は、巧みに進んでいる。逆に日本のように場当たり的に資金援助するから、国連の常任理事国入りのために賛成票を投じて欲しいの如き外交では、いざ、アフリカ諸国に行こうがどの地域に行こうとも、容易に信用されない。地道な長期展望を有する中国に対し、短期展望ですぐに結果を求める外交の低劣さでは、日本は中国に太刀打ちできないであろう。
　蛇足ながら、小泉政権時代の日中関係は「政冷経熱」といわれてきた。小生は「政昧経迷」と考察する。日本政治は中国情勢に無知蒙昧であり、無責任な言動や首相の靖国参拝をはじめとする無定見な行動により、日中関係を不安定にした罪は重い。経迷は、日本が中国関連の経済において迷走する様を意味する。経済は、対中貿易の活発化や、将来、中国本土からの観光客を見込むなど、一見明るく活発な経済に思われる。日本における身近な話題から見ると、様々な手口で色々な種類の金属製品の盗難騒ぎが相次ぐ程、金属価格が高騰したり、最近では、だぶついていたはずのダンボールをはじめとする古紙が、中国向けに大量に販売されている。しかし、実際は安く豊富な人件費や広大な市場とばかり中国進出しても、そう甘くない現実が存在する。中小企業は、現地で製品の差別化あるいは現地より高い水準の技術やサービスが可能なうちは、大切にされる。しかし、現地企業が競争力をつけライバルと認知されれば、容赦なく足を引っ張られる。例えば、優秀な人材獲得や取引で、地元企業優先にされる。さらに地元官僚の力を借りて法律に基づくとして立ちのきをせまられることもある。ロシアの液化天然ガス、サハリン１・２をめぐるロシア政府ほど露骨で非常識ではないものの、西欧式の契約をとっても、最後は中国5000年の常識が優るとはねつけられる場合がある。よくよく中国事情を知らなければ、ひどい目にあう。日本の有名大企業の場合、企業に研究所やシンクタンクを抱えており、中国事情については日本の外務省以上に詳しいので、かなりの成果をあげている。しかし、それとて時には誤りがあったり、折角適切な情報であっても本社が採用しないせいで失敗することもある。なによりも日本の政治家のせいで、日本への信頼は低い。例えば、三峡ダムや大陸間高速鉄道の主要幹線といった国家プロジェクトでは、欧米の企業が大部分受注に成功している。つまり、ここぞという大事な仕事をまわされないくらい、信用はない。さらについでながら、見た目で９割わかるとして中国人を外見から判断するのは、軽率であり、危険な場合もある。なぜならば、中国人は俳優の遺伝子があると思われるほど、外見をつくろい演じることが巧みだからである。外見で中国人を判断し、油断していると赤子の手をひねるが如く騙されることとなり、手ひどい反撃を蒙るであろう。
　やはり、中国での経験や研鑽を積んだ人の意見は重要である。例えば、前駐中国大使の阿南惟茂(あなみ　これしげ)氏は、小泉首相に靖国参拝をやめるように進言したことでも知られている。同氏は「日中両国が互いの重要性を認識し、相手の事情も知りながら国益を率直に主張しうべきだ。協力して国際社会に貢献を」と訴えている(31)。アメリカ一辺倒では、判断を誤る虞が高い。最近、大化の改新を境に滅ぼされた蘇我氏に対する見直しがなされている。蘇我氏は、百済一辺倒の外交でなく、新羅、高句麗、唐とも、対等でバランスのとれた全方位外交を志向していた。大化の改新後は、周知のとおり百済一辺倒の外交姿勢に戻し、白村江の戦いでの惨敗となった。外交チャンネルが偏ることで国際情勢の判断を誤まった例として、教訓となる。日本政府が中国事情を知悉し鑑みない限り、米中にとりバッシングではなくパッシングの対象となる。
　
第５章　中国人と地縁
　
　今までは、地域と有名人とを一緒に述べてきたが、この章では大づかみに中国人と地縁とのかかわりについて見てみたい。
　例えば、同じ江蘇省内の蘇州市と南通市との賃金格差について、次のような興味深い分析がある。「蘇州にある企業は蘇州にあるというだけで 南通の企業より年賃金が 300元ほど高く、外資系企業というだけで 都市集団所有制企業よりも300ー400元賃金が高く、逆に郷鎮企業は300ー400元ほど賃金が低い。つまり、生産性よりも所在地と所有制によって賃金が大きく左右されるのである」(32)。ロシアで言えば、出身戸籍により大学での奨学金受給や就職で差別されるプロピースカ制度に相当する現象である。加えて、中国では都市部と農村部の出身の違いだけで、児童の初等教育における授業料に差がある。農村部から来た世帯の児童から多く授業料を徴収するのである。中国では、貧困な地域の出身であればあるほど、社会において上昇するのは困難である。最近では、農村出身の出稼ぎ労働者に対し、都市戸籍取得を認めないとか、義務教育や医療（サービスを受けるための費用の価格差）などでの差別のみにとどまらない。例えば、北京市にあり世界遺産として有名な観光地・頤和園が、一ヶ月間有効の格安入園券を北京市に戸籍のある住民にしか販売せず、「流動人口」として扱われる出稼ぎ労働者に摘要されないという差別も報じられている(33)。都市と農村との戸籍を分けることは、一面では都市のスラム化を抑制する効果が一定程度働いた。しかし、それが深刻な格差社会を引き起こす要因としても作用している。また、地域単位での対抗意識も中国には存在する。例を挙げる。
　2004ー2005年にかけて反日デモが中国の大都市で発生した。日本側の無神経で無思慮な行為が中国の大衆とりわけ一部の若者の暴走につながった事実を、まず受け止めておく必要がある。その際、中国の都市で相次いで反日デモが発生した要因の一つに、中国人の面子の問題がある。つまり、地縁に絡み、「我々の街ではこれだけ愛国示威運動をなしたのだ。」という競争につながった面もある。これは今回の件のみでない。毛沢東時代を見ても例を挙げることができる。例えば、大躍進政策のもと豊作を宣伝するために、子供が金色の大地の如き稲穂を歩く捏造写真を党中央に提出した挙句、収穫物が供出され深刻な餓死者を出す地域が増加した。また、文革において、国内の列車が無料だったとはいえ、毛沢東をたたえるために若者を北京に多く送り出す競争が地縁に絡んで競争されるなど、他にも様々な時代からも例を挙げることができる。
　蛇足ながら、2004ー2005年の反日デモについての小生の感想を述べる。反日デモの中で日本が国連の常任理事国入りする前に日中戦争に関する歴史認識を正しく有し、反省の上、民間賠償に応じるべきの旨の訴えの内容は正論である。日本は近隣諸国をはじめとする国々の信用なくして常任理事国のような大役は不可能だからだ。また、日本は経済力に見合った地位が欲しいとか、自主自立を唱えても国際社会に向けて具体的な貢献内容なり公約がなければ、アメリカの１票に過ぎない意見のない国としてみなされる。だが、中国の若者による「愛国無罪」のスローガンはあまりにいただけなかった。愛国主義のための行為なら天下御免といった内容だが、いかにも文革時代の辛酸を知らず、一人っ子政策にともない我儘勝手に育ってきたことが、明白であるからだ。あのスローガンを見て、中国人の多くはデモを支持せず、政府もそのうちデモを中止させるだろうと、小生にも予測できたくらいである。さらにいえば、1989年の学生運動のような命がけで中国社会の問題を中国国内外に向けて訴えるという気概が感じられず、リスクの少ないピクニックにすら見えた。反日デモ隊は、江沢民がわざわざ愛国を強調して失敗したという前例だけでとどめておけばよかったものを、もっと拙劣な形で繰り返したことは、本当にまずかった。日本人の中国人に対する恩義や敬愛の念は軽微なものではない。例えば、文化上、中国なくしては文字の獲得一つとっても困難であっただろう。また、「中国残留日本人孤児」の方々を、敵国の出自にもかかわらず、大切に育てたくらいの度量がある。偉大な伝統や文化を有し、道徳心が高く情に厚い中国人という極めて良好な評価を、今回の一部の反日デモ隊は、中国人は自民族のことしか考えない心の狭い「小物」という評判に貶めたことは、有罪である。「愛国無罪(アイグオ　ウズォイ)（ Aiguo wuzui ）」が「愛国うざい」（「うざい」は関東地方の方言で、鬱陶しく不快を意味する）と聞こえるほど小生には不快であった。実際、上海での大規模なデモ以降、中国政府はデモを取り締まった。群集の不満に関し、ある程度ガス抜きをさせた頃を見計らい、政府に対する批判デモに発展させず、治安の安定をはかった面もあるが、世界中のビジネスマンの見る中で、これ以上デモを放置しては中国の信用を失墜させかねないという判断であった。2008年の北京オリンピックや2010年の上海万博といった大規模な国際イベントをひかえている現状からしても、なおさらである。日本の一部メディアは「官製デモ」と過剰反応したが、見当違いである。それにここぞとばかり、同じようなデモの映像を繰り返し放映したのには、中国人への悪意があるからでないのかと、疑いたくなるほどである。中国の一部の若者の見せた品性を欠く同様あるいはそれ以上に情けない行為や言動を日本人がしているのも事実なので、一方的に中国人を糾弾するのは公平でないことを明記する。
　反日デモこそほとんどなくなったが、ネット上の日中の若者の書き込みをみても、母国語すら満足に使用できないのかというほど稚拙な文体や貧困な内容のものが目につく。いくら自分達の境遇に激しい欲求不満を抱いている哀れな方々とはいえ、あまりにもいただけない。お互いに自国の正しい歴史や文化を知った上で相手の歴史や文化を知り、意見をぶつけ合うべきである。特に漢籍の教養は、伝統的に東アジア共通の教養であるので重要である。ただし、日本でいうところの小学校の段階から必修にするという意見には賛成しない。なんでも知識の詰め込みを強制するのではなく、自由に選択できるほうが身に付きやすく、親しめるからだ。ネットで低次元の言動を繰り返し対話を試みようとしない現状では、互いに憎しみや不信感といった負の感情しか生まず、建設的な友好関係を築けなくする虞がある。プラトンは『ラケス』の中で「正義は敵見方双方がそれぞれに有する」と、喝破している。同様なことが愛国心にもいえる。それぞれの愛国心をいたずらに主張するだけでは、他者に対し不寛容になり、凶暴な排他性を帯びた攻撃を互いにやりかねない。もちろん、日中の一部の心無い若者の行為であり、無視することも一つの手段ではある。　余談であるが、小生の経験上、中国人との激しい議論や喧嘩を望むならば、お国自慢をすることである。そうすれば、時間等の制約がない限り際限なく議論ができる。文字通り舌戦となること請け合いである。相手は郷土ないし国の代表とばかりに容易に妥協しないからだ。
　ついでながら、中国を動かす要素について、小生の推測を付け加える。毛沢東はただ、一番強くなりたっかたのみでなく、歴史を鑑みた上で官僚勢力を警戒したのだろう。わけても客家に対する警戒心が強かった。客家は伝統的に科挙官僚を多く輩出してきた。太平天国の場合、内ゲバまがいの内部分裂もあったが、李鴻章や曽国藩らの新興漢人官僚に敗れた。孫文にしても、清朝打倒を志した最初の頃は伝統的正攻法の革命戦争を繰り返して敗れていたが、そもそも何度も革命戦争を起こした資金源は、客家の結び付きに由来する。日中戦争で中国本土をはじめ東南アジアの華僑を日本軍が大量に虐殺してきたにもかかわらず、中国の戦勝に至るまで援蒋ルートを支え続けた。蒋介石についても、客家系の実力者の庇護により権勢を誇っていた。例えば、スターリング・シーグレーブの『宋王朝』に詳しく著述されているように、海南島出身の客家系の血筋を有するチャーリー宋が存在する。裸一貫でアメリカで出版業を皮切りに事業の成功をおさめたチャーリー宋は、中国史に残る有力な一族の礎となった。それが孫文夫人の宋慶齢、蒋介石夫人の宋美齢をはじめとする有力者を出し、「四大家族」と称される有力な血族となった。周知のとおり、毛沢東は国共内戦に勝利し、宋慶齢を除く宋一族を台湾やアメリカへと追放できた。それでも毛沢東の客家系官僚に対する警戒感は消えなかった。毛沢東は、官僚が政権内部で実力を有することで広大なネットワークを有し、経済力がある客家の実力者と手を結び、最悪の場合、革命を起こして自分の権力を危うくすると警戒したため、大衆動員の文革を引き起こしたのだろう。歴史上、革命勢力になれたのも、広範囲なネットワークを有し、経済力があるためである。大げさに言えば、アジア版ロスチャイルドといったところだろう。毛沢東は、終生ソ連に対して懐疑的だったのも、官僚主導の体制を容認したくなかったからであろう。
　毛沢東の死後、客家系官僚の領袖でもある鄧小平が政権を担った。彼は、経済改革の一方、毛沢東すら肖像画や亡骸をはじめ共産党の権威を象徴するものとして利用するというしたたかさがある。鄧小平は経済発展の持続を志向し今日に至る指針を残していった。
　江・胡政権と一瞥すると、昔の中国を髣髴させるような地縁がらみの政権交代のように見える。しかし、裏では、客家系官僚がバランスを巧みに維持しているのであろう。汚職問題を理由とした政権交代には、実際解任された人々がその地域閥において獅子身中の虫になることを抑制するとともに、地域閥の権力バランスが一方に偏らないように配慮されている。かつて、郭沫若は、中国人を個人主義が強く団結しずらい様相から、砂に譬えた。つまり、バラバラで統一しずらいことをさしている。それを拡大していけば、血縁や地縁といった単位に敷衍できる。地縁はそのままでは独立した一つの単位である。それらを結び付け統一国家の体裁を整える役割を担っているのが、広大なネットワークを有する客家系官僚であると、推測する。中国の官僚組織が日本のような組織疲労した閉塞状況を迎えないうちは、当面、対外的には安定した政権運営を継続するであろう。当面、考えられることは、2010年の上海万博を境に中国はどのようになるかである。胡錦濤までは鄧小平路線を継承している。問題は胡政権後の中国指導部のあり方である。沿岸地域で獲得した富をいかに中国全土に分配するかが焦点の一つとなる。ポスト胡錦濤は真の意味でポスト鄧小平時代として注目される。
　最後に中国の碩学の一人林語堂『中国＝文化と思想』(34)から教えを請うことにする。
　中国では血縁をもとにした閨閥主義が伝統的に幅を利かせてきた。「閨閥とは、妻の実家の関係を指す。中国に「一人得道、鶏犬昇天」という俗諺があるが、一族の一人が権力を握ればその閨閥の者全員がその権勢（の恩恵に）にあずかるというほどの意味」(35)である。実際、千年にもわたり科挙が実施された背景にもつながる。それが地域レベルで発展したのが地縁である。林語堂は、村落制度について次のように紹介している。「自分の家族を愛する心は自分の宗族を愛する心へと発展し、自分の宗族を愛する心は自分を生み育てた大地への愛へと発展した。ここから一種の郷土への愛情が芽生えるのである。これを地方主義と呼ぶことができよう。中国語では「同郷観念（＊同郷意識の意）」と呼ぶ。こうした地方主義、すなわち同郷意識は同じ村、同じ県、同じ省の人間同士を結び付け、地方の公立学校、共同の穀物倉庫、商業連合会、孤児院、その他の公共機関といったものを共同で責任を持って運営維持することを促している。これらのものは基本的に家族心理からくるものであり、家族形態を離れるものではない。同郷意識は拡大した家族意識であり、共同事業を実現させている心理的原動力となっている」(36)。これは慈善事業が中国に生まれる要因にとどまらず、地縁の心理面を雄弁に語っている。それは中国人が外国人にみせる排他性として現れることもあるが、逆に同胞として認められた場合の強固な人間関係を裏付ける根拠ともなる。周恩来はかつて田中角栄総理に日中国交正常化に際し、「中国人は井戸を掘ってくれた恩人のことは代々忘れることはない。」と述べた言葉にも象徴される。
　
おわりに
　
　４人の国家主席を見ると、毛沢東と鄧小平はカリスマ性を有するストロングマンであるのに対し、江沢民と胡錦濤は実務型の調整役といえる。つまり、前者は地縁のしがらみにとらわれず、権力を振るったのに対し、後者は地域閥を個人の権力で抑圧や排除せず、合議のもとで政権運営をしている。
　中華人民共和国の歴代国家主席をみると、明王朝の歴代皇帝の変遷を彷彿させられる。すなわち、毛沢東が太祖洪武帝にあたり、華国鋒は建文帝、鄧小平は永楽帝、その後の国家主席は、あまり有名でない第４目の仁宗洪熙帝にあたる。仁宗以降は強烈な個性を発揮した皇帝は少なかったものの、明王朝は長く繁栄した。ただし、明王朝は周辺地域との朝貢貿易に基づく伝統的な冊封体制に回帰した。それに対し、現代の中国は「世界の工場」と呼ばれるほど、世界各地に展開を広げている違いがある。明王朝は土木の変に象徴される無理な外征をしたこともあり、国力を弱めてしまった。中国は、無謀な対外戦争をしないかぎり、国内に不安定要素をかかえていても安定した国家を長く運営できる。
　中国人と血縁との関係もまた、重要である。例えば、上海国際問題研究所所長の兪新天(ゆ　しんてん)氏が、東アジアとアラビア半島のイスラム文化について、次のような興味深い比較をしている。「中華文明とインド文化の影響のもとで、イスラム文化の東アジアでの姿はアラビア半島でのそれとはまったく異なったものとなっている。（イスラムの）教義の基本は同じであるが、文化的な表れや解釈において異なっていたのだ。アラブにおいては、部落や部族が強調されているが、東南アジアでは、家族や親族が強調され、父母を敬い、国家を尊重し、教育を重視することに価値が置かれている。アラブでは武力と血縁者のための復讐とが尊ばれているが、東アジアにおいては、調和と平和が大切にされる」(37)。
　また、小生は、学生時代に中国新疆ウイグル自治区出身の留学生から聞いた話で、今でも考えさせられることがある。中国領内とロシア領内のウイグル族の性格についてである。ある中国領内のウイグル族が、ロシア領内の親戚に当たるウイグル族宅を訪問した。歓迎の宴を楽しみ就寝した晩、荷物を盗まれた。状況からしてロシアの親戚を疑わざるを得なかった。しかし、その親戚はいかにも見え透いた安っぽいうそを並べ、すっかり中国の親戚の信用をなくしたという。バーナード・ショーや吉田茂は、中国人とロシア人の民族性を次のように述べたことがある。金勘定に細かく現実主義的中国人と、夢見がちで理想主義的ロシア人とは、一時手を結ぶことがあってもいずれ袂を分かつことになるであろう。ウイグル族の例から、土地柄というのは血縁より濃いことがあるのか。あるいは民族とはその地の大多数で支配的地位にある民族性からも影響を受けるものなのか。そして、民族性とは、血族や地縁でなければ一体どのように定義する事柄なんだろうか等と疑問にする。地縁・血縁からは様々な事象を考える示唆に富む主題であると実感させられる。
　
　(1)『北海道新聞』（2006年 9月26日付け朝刊）。
　(2) 楊麗君『文化大革命と中国の社会構造ー公民権の配分と集団的暴力行為ー』御茶の
　　　水書房、2003年、45頁。
　(3) 宮崎正弘『出身地でわかる中国人』ＰＨＰ新書、2006年。
　(4) 許介鱗・村田忠禧編『現代中国治国論　蒋介石から胡錦濤まで』勉誠出版、2004
　　　年。
　(5) 宮崎正弘、前掲書、 198頁。
　(6) 宮崎正弘、前掲書、200～201頁。
　(7) 宮崎正弘、前掲書、 201頁。
　(8) 小島晋治『洪秀全と太平天国』岩波書店、2001年。
　(9) ２１世紀中国総研編『中国情報源2006ー2007年版』蒼蒼社、2006年、196ー229
　　　 頁。ちなみに、ネット検索からも閲覧可能。
(10) 宮崎正弘、前掲書、206頁。
(11) 同上書、208頁。
(12) 莫邦富「連載｜中国経済躍進の現場を歩くー第二の「長江デルタ」を求めて　第
　　　３回　四川省・重慶市」（『世界』岩波書店、2004年10月号、 267頁）。
(13) 林浩著・藤村久雄訳『アジアの世紀の鍵を握る客家(ハッカ)の原像』中央公論社、1996年。
(14) 許介鱗他、前掲書、73頁。
(15) 同上書、80頁。
(16) 楊麗君、前掲書、99ー100頁。
(17) 小島朋之著『生きた中国学　最近中国事情』学陽書房、1988年、284頁。
(18) 宮崎正弘、前掲書、60頁。
(19) 許介鱗他、前掲書、141ー142頁。
(20) ベアテ。シロタ・ゴードン著『ベアテと語る「女性の幸福」と憲法』晶文社、2006
　　　 年、 100頁。
(21)　岡部達味『日中関係の過去と将来　　誤解を越えて』岩波書店、2006年、47ー48
　　　 頁。
(22) 同上書、37頁。
(23) 同上書、13頁。
(24) 同上書、37頁。
(25) 宮崎正弘、前掲書、96頁。
(26) 同上書、36頁。
(27) 竹内実編訳『毛沢東初期詞文集　中国はどこへ行くのか』岩波書店、2000年、143
　　　 頁。
(28) 許介鱗他、前掲書、184ー185頁。
(29) 『北海道新聞』（2006年11月16日付け朝刊）。
(30) 楊麗君、前掲書、100頁。
(31) 『北海道新聞』（2006年12月13日付け朝刊）。
(32) 丸川知雄『労働市場の地殻変動　シリーズ現代中国経済第３巻』名古屋大学出版会
　　　、2002年、128頁。
(33)『北海道新聞』（2007年5月9日付け朝刊）。
(34) 林語堂著、鋤柄治郎訳『中国＝文化と思想』講談社、1999年。この著書は1935年
　　　にニューヨークのジョン・デイ社から出版されたもので原題は＜My Country and
　　　My People＞である。『大地』で有名なパール・バックの強い勧めにより、西洋人
　　　に対して、中国人の民族、風土、思想、文化、哲学、歴史を紹介するために英語で
　　　書かれた。
(35) 同上書、 282頁。
(36) 同上書、 315頁。
(37) 兪新天著、石井剛訳「東アジア・アイデンティティの胎動ー文化の視座からー」（
　　　毛里和子・張蘊嶺編著『日中関係をどう構築するか』岩波書店、2004年、91頁）。
　
参考文献
　
天児慧・石原享一・朱建栄・辻康吾・菱田雅晴・村田雄二郎編『岩波現代中国事典』
　　岩波書店、1999年。
程翔著、辻田堅次郎訳『天安門事件と鄧小平』花伝社、1990年。